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2012/10 Beaver

Beaver

12年10月 ビーバー

ビーバーの色をご存知だと思う。もちろん茶色である。見え方によってはこげ茶だったり、チョコレート色だったりするが、とにかく茶色。それがたいてい濡れていて、写真にすると質感が出ない。光を反射して白とびするか、黒くつぶれてしまう。決して写真家のやる気を刺激するものとはいえない。

そもそも多くの哺乳動物にとって重要な情報源、あるいは情報伝達手段は臭いだ。だから鳥のように自分の体色を目立たせる必要がなかった。保護色として大地に溶け込む方が生存に有利となった種類が多い。そういう動物のほとんどは色弱、または色盲といわれている。ビーバーは自身の体色がいくら地味でも、それを嘆いているわけではないだろう。

ちなみに哺乳動物の例外は霊長類の、主に高等なサルのなかま。熟した果実を色で見分けるといわれている。で、その例外のなかに、そのまた例外がある。ヒト科オヤジ属のある種類がそれだ。彼らは300mも先の信号の色を見分けられるのだが、誰かが自室の壁の色をこっそりと塗り替えても気づかないくらい、色には無頓着。中古車を買いに行っても、年式や走行距離、燃費ばかりに気を取られ、購入後、車両登録に記入するまで、何色だった知らなかったりする。生活環境色盲の彼らだが、洋服の色には少々うるさい。彼らが所持する洋服の8割は茶色かグレー。それが目立たず、人ごみに紛れるのに有利だと本能的に知っているのだ。

とにかく、ビーバーの撮影というと日の出前の薄暮ということもあって、色彩が豊かな写真など期待しようもなかった。ところがこの秋に何日か通ったビーバーロッジ(ビーバーの巣は、ロッジと呼ばれる)の周辺はちょうど植物が黄葉し、それが反射して水面を染めていた。

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ビーバーをファインダーに捉え追っていくと、水面は微妙に変化し、時には黄色に、時には黄緑に、うまくするとオーロラのような背景になった。撮影後の映像をカメラのモニターで見るとなかなか刺激的である。カメラのISO感度を強引に引き上げているせいで、発色が大げさになっているのか、暗さで人間の色覚が低下しているからなのか、実際に見た目以上に鮮やかだ。

そうこうしているうちに、一頭がビーバーロッジの補修工事を始めた。水底の水草や、樹皮を食べ終えて捨てられた枝をくわえて運び、ロッジの上に積み上げる作業。これを何度も繰り返す。ピント合わせの下手なカメラマンにはありがたいことなのだが、連日こればかりやられると、撮影意欲はダウンしていく。一方で、この地味な作業を黙々と続けるあたり、なんとも健気であり、農耕民族に血筋を持つ僕としては、その勤勉さに応援せざるをえない。

カメラの感度をノーマルに戻すころ、ビーバーたちはロッジの中に入ってしまう。最後に見てから20分姿を現さなければ、撮影は終わりだ。車までしばらく歩かなければならないから、僕は茶色のジャンバーを脱いで、ザックにくくりつける。

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