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2012/11 Goat & Icicle

Mountain Goat

12年11月 マウンテンゴートと氷柱

冬の風景で何がしびれるかというと、氷柱である。人それぞれの好みの問題だから、圧倒的に人気があるとまでは言わないが、かなり多くの人があれに魅了され、カメラを向けている。そうとうに手の込んだ芸術作品がほんの一夜に創られてしまうという、自然の魔力に驚嘆するからだろう。

氷柱は冬の風物詩として寒さを演出するわけだが、岩山に出現するのは初冬が多い。厳冬期には地表が凍ってしまうので、岩肌から水がしみ出してこない。一方、11月は気候が不安定で、氷点下20度を下回ったかと思うと、翌週には大量の雨が降ったりする。それが崖からしみ出して冷えると、巨大な氷柱、あるいは氷壁が形成されるのだ。

そして美しい氷柱を見れば、そこに野生動物が出現するのを願うのは当然である。特に冬毛のマウンテンゴートがよく似合う。ある氷柱の周辺に彼らが来ることがあると判れば、そこに一日中張り込む。

動物が来るのを待つというのにはいろいろなパターンがある。夏や秋、湖畔でムースの出現を待つのが、もっとも安易。腰を下ろして、文庫本を読んでいればいい。ムースはゆっくりと水草を食むわけだから、昼寝なんかもOKだ。ワシが巣に餌を運ぶシーンを狙うと、そうはいかない。ワシは突然飛来するので、何十秒か目を離していたら、最も絵的な着地のシーンを逃してしまうかもしれない。

冬のマウンテンゴートの場合は、概して風との戦いだ。強風にずっとあおられていると、それだけでけっこう疲れる。本を読むことはできないが、ゴートは歩いてやってくるわけだから、身構える時間は十分にある。ただしシャッターを押す指先が冷え切って不器用なうえに、気合が入りすぎて三脚を使ってもぶらしてしまうことがままある。興奮するために撮影に来ているわけだから、ブレてもしかたないのだけれど。

Sumio Harada
冬は道路が閉まるので、歩いて撮影キャンプ装備を運ぶ。
雪が積もったら、二つのそりに、カートを載せて引っ張る。
Photo by Steven Gnam