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2012/06 Bighorn Lamb

Bighorn Sheep

12年6月 ビッグホーン 子ヒツジ

ビッグホーンは、ロッキーの大型動物の中では最も撮影しやすい動物のひとつ。国立公園では、まったくと言っていいほど人間を警戒しないヒツジもいる。ハイキングトレールの近くで草を食んでいれば、誰でも簡単に写真を撮ることができる。それだけに、僕としては何か普通とは違う写真を撮らなければならない。

そういう写真家のために、人馴れしたビッグホーンでも近づくのが難しい情況がある。子ヒツジが生まれてから2~3週間までは、母親の警戒心は非常に強い。当然、山の上のほうの崖の周辺で過ごし、たとえ崖であっても人が近づくと逃げてしまう。人間だから心配無用ではないか、とこちらの気持ちを伝えたいのだが、幼い子ヒツジを持つ母親はあくまでも疑い深い。

しょうがないので、最大の望遠レンズを担いで山に登ることになり、自動的に最大の三脚も持っていかなければならず、大きいレンズは機動性が悪いから手持ちの望遠を2本ともう1台別のカメラボデーもザックに押し込むと、けっこうな重量になってしまう。トレールが無いから、斜面の直登。ヒツジのためにこんなに疲労してもいいものかと疑念しつつも、動物写真家はマゾになるべしという原点に立ち返る。

生まれたばかりの子羊と母親はちんまりと崖の周辺で過ごすのだが、やがて子持ちの雌が集まり母子群を形成する。母親の警戒心はまだ強いが、子どもたちどうしが群れてよく遊ぶ。平坦な草地よりも、地形的に複雑な崖の周辺が特にお気に入りだ。崖を忍者のように斜めに走り渡り、すぐさま、別の岩山に突進したりする。

Bighorn Sheep

もう一つの遊び場は、雪渓の上。何頭もの子羊が走り回り、ジャンプし、体をくねらせる。雪面を駆け下りて、わざと雪を跳ね飛ばす。別の子ヒツジの背中に乗ろうとするチビもいる。まちがいなく彼らは、はしゃいでいる。歓喜に満ちている。無表情に、ただ雪渓を渡る母親たちとは対照的で、生涯で最も楽しいのがこの幼少時代なのではないかと思うのだが、ビッグホーンにはビッグホーンなりの人生があるのだから、実のところは母親たちに訊いてみないともちろんわからない。

いずれにせよ子ヒツジたちが遊んでいるあいだ、僕は思う存分シャッターを切ることができて、重い機材を担ぎ上げた甲斐があったとほくそえむ。そして足腰の疲れも一気に吹っ飛ぶのである、というのは若い時の話で、生涯で最も元気だった青年時代をとうに過ぎたオヤジは、腰を何度もたたきながら眼下の谷をにらみ、深くため息をつくのである。

june2012_03