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2015/07 Wild Fire

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2015年7月 ワイルドファイヤー

グレイシャー国立公園の山火事発生のニュースが広まった時、誰もが「ついに始まったか」と思ったに違いない。6月から2ヶ月近く十分な雨が降らず、大地も植物も乾ききっていた。幸いにもこれまで落雷がなかったので山火事は起こらなかったが、燃える条件は揃っていた。こんな時は、ひとたび燃え始めたら火勢は容易には鎮まらない。

山火事の名は、レイノルズクリークファイヤー。慣例通り出火地点の名がつけられた。出火当日と翌日は強風が吹き荒れ、火はまたたくまに森林を呑み込み巨大化。初期消火できるかどうかが森林火災鎮圧の分かれ目になるのだが、望むべくもない状況だった。二日後には3,000エーカー(およそ12平方キロ)に燃え広がった。

出火原因は不明。落雷が認められなかったから、人災の可能性が高い。国立公園には不特定多数、無責任大勢の人が来るから、たとえ悪意がなくても火の不始末をしでかす可能性がある。公園管理局の対応は、自然発火の場合は消火活動は建築物の保護にとどめるが、人間が火を出したとなると黙ってはいられない。2006年には公園内から広まった山火事が、東側のブラックフィートインディアン居留区に延焼し、多大な経済的損失をもたらして訴訟問題になった。

今回の火災も同様の延焼が危惧されるとあって、州内外から600人以上のファイヤーファイターが集められた。ワイルドファイヤーに立ち向かうべき精鋭部隊だ。風下の延焼方向に線状の爆発物(もちろん火は出ない)をしかけ、草や潅木などを吹き飛ばし、ファイヤーラインと呼ばれる防火帯を設ける作戦。火と人間の、命がけの攻防である。さらに複数の大型のヘリコプターが湖から水をくみ上げ、延焼しているところに水をかける。出火から約1週間で、ファイヤーラインは1.2キロに達し、のべ4,000トンもの水をかけたという。

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さて、この山火事を撮影すべく、僕は公園の東側に出かけた。といっても、山火事の現場は立ち入り禁止なので、燃える谷が一望できる場所からの望遠撮影である。

谷底の湖畔から、森林限界近くまで山の斜面のあちこちから煙が昇っていた。焼き尽くされて、黒々とした斜面もある。リスなどの小動物も、巣立ち前の鳥も、トウヒの巨木も小指ほどの草も、無数の生命が煙と炎に呑み込まれたことだろう。

一日も早く鎮火して欲しいと願うのは善良な市民として当然ではあるが、カメラを持つと派手な絵柄を撮りたくなるのは全うな写真家の必然である。あいにく火の勢いが強いほど大量の煙が噴出し、遠くからでは炎そのものはよく見えない。炎に包まれた黒い木々を、のた打ち回る炎の束を期待していた僕としては、いささか拍子抜け。ワイルドファイヤーと言うからには、写真の決め手は炎である。

太陽が北東の稜線に沈み、暗闇が迫ると撮影状況は好転。炎と、炎に照らされた赤い煙が闇に浮かび始めた。斜面のあちこちで赤い光が明滅。やはり山火事は生き物だ。低い半月がほど良い光量で山を照らす。

もっと大きく炎を写さねばならない。僕はレンズを600ミリに切り替えた。シャッタースピードは30秒。カメラ側にもう一つ三脚をつけて、ブレを防ぐ。はたして、燃える森林の写真は撮れたのだが、やはり倍率が足りなくて迫力不足。くわえて長時間露出だから動く炎の輪郭はなく、火の中心部は白トビしてしまった。僕が抱く炎のイメージというのは、あの星飛雄馬の瞳の中でめらめらと燃え上がる深紅の炎なのだが。(たしかシロクロのテレビで見ていたはずなのに、記憶というのは都合がいいもので、しっかり色がついている。)

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