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2011/07 Humpback Whale

Humpback Whale

11年7月 ザトウクジラ

この夏は7月から9月の3ヶ月間、アラスカとユーコンで過ごした。仕事のための取材旅行ではなく、今まで気にはなっていたが行くチャンスがなかったところを、ゆっくりと時間をかけて旅してみよう、というのが妻との共通の目的だった。

最初に訪れたところは、東南アラスカの島。夏はニシンなどの魚が豊富で、一帯にはザトウクジラが集まる。僕たちはキャンプ用具とカヤックごと、ウォータータクシーでその島へ運んでもらった。手軽に、かつ効率的にクジラを見るにはホェールウォッチングボートに乗ればいいが、野生動物を見るには、生息地の近くにキャンプするのが断然おもしろい。

食べ物の多くは海から調達できた。魚はもちろんのこと、ワカメや貝がどっさり採れる。サケが簡単に釣れてしまうと、食料調達が拍子抜けしてしまうほどだ。ちなみに、その後妻は、ハマグリに似た貝の毒に当たって神経をやられたから、貝はあまりお勧めできない。

また、トドやアザラシ、ラッコ、ハクトウワシなどが姿を見せてくれるのも、浜辺のキャンプならではの楽しみ。

満潮、あるいは干潮前後の、潮の流れが少ないときはカヤッキング。水面近くの目線でクジラを見ると、怖いくらいの迫力がある。

クジラは毎日見ることができた。はるか沖からでも呼吸音が聞こえるので、そこを泳いでいることがわかる。時には、クジラが浜辺から100メートルにまで接近することもあった。見えるとは言っても、呼吸のために浮上した時に背びれが、あるいは沈むときに尾びれがほんの数秒間見えるだけだ。それでもクジラの存在感は、僕たちを圧した。

Humpback Whale

キャンプ6日目、日曜ということもあって漁船などが少なく、海は穏やかだった。静けさと関係があるのかはわからないが、その日クジラたちは活発に遊んでいた。仰向けになり胸びれで水面をたたいたり、尾を上げて振ったりする。声も聞こえる。

ハイライトは、やはりブリーチングだ。クジラの全身が見える、唯一のチャンス。

一瞬、巨体が宙に舞う。水面に体をたたきつけると同時に、ものすごい水しぶき。カモメの一団が吹き飛ぶ。ダイナマイトが炸裂したような轟音。僕は、ただ唖然と立ちつくすのみ。

海には、ものすごい生き物がいた。

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岸辺近くのクジラとラッコを、妻がビデオで撮影。