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2008/01 First Light

First Light

1月・元旦のファーストライト

2008年、元旦。カナディアンロッキー東南部にあるキャンモアで私は新年を迎え、山々が初日の光に輝くのを待っていた。

東の薄雲があかね色に染まると、 空は刻々と表情を変え、下弦を過ぎた月が稜線の上で、やがて青空に呑み込まれるのをこばんでいる。

やがてランドル山群の一つのピークに、赤みの濃い光が差し始めた。カメラに触れる前に、胸の中でごく手短に新年の祈りを捧げる。私には信仰心は無く、ふだん縁起をかつぐようなこともない。だが、ファーストライトに浮かぶ山の姿には、無条件に心が洗浄される。ほんの一瞬であれ、祈りが聞き届けられるのではないかと、錯覚を覚える。

いざ、カメラを抱えると、もっと赤く、と念じ始める。私にとって日の出前後、日の入り前後の山の写真は、いかにドラマティックに色づくかで価値が決まる。太陽が地平に近いほど日光の赤みは濃くなるが、地平に近いほど光量が弱くなり空からの青白い間接光の影響を受けてしまう。だからシャッターチャンスを読むのは難しい。地平近くの大気の透明度、雲の厚さや位置などによって、光は生き物のように変化する。

ごく稀に、予想を超える荘厳な山の輝きを見ることがある。そのほとんどは、脇役としての雲がうまく作用したときだ。そんな時はほんの1~2分の間に、狂ったようにシャッターを押す。今年の元旦は、良くも悪くも、予想範囲内の光景と結果にとどまった。

Mountain Goat Hilltop

ちょうど20年前、私はバンフ国立公園北部でキャンプしていた。元旦にはマウントアサバスカのファーストライトを撮影するために、夜明け前にテントを出て尾根に登った。その朝は快晴で、雲の手助けはなかったものの、山々はみごとに輝いた。凍った空気は澄み切り、一帯の山岳は宇宙空間に突き出しているかのよう。その場に自分が存在している満足感で思考は停止し、もはや祈りを捧げる必要もなかった。撮影の帰路、私はマウンテンゴートに遭遇した。まったくエサのないこんなところに、彼らはどうして来てしまったのだろうか。暗い谷を背景に、元旦の斜光を浴び尾根にたたずむマウンテンゴートは、神々しいまでに輝いていた。

後年、その時のマウンテンゴートの写真は、ナショナルジオグラフィックに掲載された。ファーストライトの御利益は、やはりあった。