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2009/02 Winter Camp

Winter Camp

09年2月 冬のキャンプ

昨年末に膝の靱帯を痛めてしまった。医者にレントゲン写真から診断してもらうと、損傷した靱帯は、膝にブレイスをくっつけて、無理に動かさなければ手術をしなくても自然治癒するとのことだった。不幸中の幸いにほっと一息。その後約2ヶ月、長距離のスノーシューイングやクロスカントリースキーをしないよう、僕なりに自制していた。

2月下旬、もうそろそろ大丈夫だろうと、正直に言うと我慢できなくなって、メニーグレイシャーにキャンプに出かけた。

キャンプ地までの道のりは11キロ。冬装備と撮影機材を担いでいくと、体調万全でもけっこういきつい。そこで、僕は橇(そり)とリヤカーの合体型車両を作って、引っ張ることにした。路面の積雪が10センチ以下ならタイヤを使い、それ以上だったらひっくり返して橇にするという設計。庭作業用の荷車を分解してハンドルと車輪を流用し、古くなったダウンヒルスキーを取り付けて橇にした。

いざ、メニーグレイシャーロードの入り口に着くと、道路にはまったく雪がなかった。2月には降雪が少なく、林の中以外は、ほとんど強風に飛ばされてしまっていたのだ。まずはリヤカー側を使って楽勝。荷物の重量から開放されて、散歩のようだ。

長い吹き溜まりでは橇の出番だ。荷物を降ろして、ハンドルをはずし、車両をひっくり返して、ハンドルを取り付け、荷物を積みなおす。手間ひまかかるが、全てを担いで歩くのに比べれば、文句を言うほどのことでもない。

3時間あまりで、キャンプ地に到着。記録的な速さ。肩こりもなし。

Bighorn Winter

翌日、朝から天気が崩れ始めた。ひどい強風と雪。ビッグホーンの生息斜面は地吹雪で霞んでいる。ふだんなら撮影を見合わせるところだが、2ヶ月間の我慢の後だから、指をくわえて山を見上げているわけには行かなかった。

樹林帯を抜けると、猛烈な風に包まれた。あわててサングラスをつける。突風に突き倒されることがあるから、常に足を開いて踏ん張っていなければならない。

ビッグホーンの撮影射程距離で、カメラをザックから出して三脚にセット。そういうときに不注意に物をザックから出すと、風に吹き飛ばされていしまう。ジャケットでもレンズケースでもパン袋でも、一瞬に飛ばされて崖の下に消える。そして三脚を立てたら、今度はそいつをずっと押さえていないとならない。手が4本くらい欲しい。

ビッグホーンはひたすら採食していた。前足で雪を堀り、枯れ草を食べる。厳冬期の彼らには、生きることが任務であり、食べることが仕事なのだ。もちろん、有り余る餌をむしゃむしゃと食べられるはずもなく、採食に費やすエネルギーよりも、食べて得られるエネルギーが何とか上回る程度の、わずかな餌を見出しているに過ぎない。

崖の風下側には、風の直撃を避けて雌のビッグホーンが座っていた。それでも地吹雪は四方からビッグホーンを包み、粉雪が全身に付着していた。そんな中で、彼らはさも平然と反芻している。なんともすさまじい冬の生活。

結局、今回のキャンプで撮影できたのは、この1日だけだった。翌日から雪はいっそうひどくなり、2日間で80センチも新雪が積もってしまった。スノーシューズを履いてもひざ上まで雪に沈み、ブレイスをはめたひざが上がらず急斜面を登ることができなくなってしまった。

4日後に退散。深い雪には、自慢の橇車両もまったく役に立たず、僕は車両ごとキャンプ用品の大半をキャンプ地に残して引き上げた。11キロの行程をスノーシューズで9時間。記録的な所要時間。靱帯の痛みは悪化し、その後1ヶ月はまた静養。不幸中の不運に、ため息が止まらない。