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2011/08 Kluane N.P.

Kluane N.P.

11年8月(1) クルアニ国立公園

カナダ、ユーコン準州の南西端にクルアニ国立公園がある。西側には国境を挟んで、アラスカのランゲル・セントエリアス国立公園の山々が連なり、一帯は北米最大の氷河地帯だ。全体を一望するには人工衛星から、と言われるほどの規模だ。

クルアニの北側と東側にはハイウェイが通っているのだが、分厚い山々に阻まれて、氷河を見ることはできない。僕たちはこれまでに何度かハイウェイを通ったが、いつも日程の都合で素通りし、歯がゆい思いをしていた。

だが、今回は違う。時間はたっぷりある。

裕福な観光客は遊覧飛行で氷河を俯瞰(ふかん)することができるが、二人で300ドルの大枚を払えない小市民は、やっぱりバックカントリースタイルで歩くしかないだろう。

行程は4泊5日。目指すはカスカウォルシュ氷河。2日で氷河末端近くへ行き、なか日3日目にオブザベーションマウンテンに登り、上から氷河を拝む。実はこのコースと後述するトゥームストーンについては、カナダの山岳ツアー会社、ヤムナスカマウンテンツアーズから情報をいただいた。

トレールは整備されていないので、時々見失ったり、わき道に入ったりで、往路では何度か迷ってしまった。沢にはいっさい橋がなく、サンダルに履き替えて渡らなければならない。しびれるほどの冷たい雪解け水だ。片道20キロほどの行程だが、距離のわりに、時間がかかる。

Kluane N.P.

いよいよ3日目。心配していた天気は悪くない。カメラと行動食以外の荷物はテント場に残して出発。

沢を4本渡り、川原を上流へ向けて4キロ歩く。上流の沢から、急斜面にあるルートに取っ付き、やせ尾根をよじのぼり、オブザベーションマウンテンの鞍部へ。

そこはひたすら広い高山草原。少し疲れてはきたが、気持ちのいい開放感。向かい側の斜面を、一頭の黒いオオカミが軽やかに走っている。空間の自由さが、いっそう際立つ。

鞍部の草原を南にしばらく歩くと、ついに出た。カスカウォルシュ。雪山と、それを囲む2本の氷河。まさに読んで字のごとく、氷の河だ。壮大な風景に、しばし見とれる。カメラを向けて、少しだけ写真を撮る。何回シャッターを押しても、今の臨場感は写せないだろう。ただそこに自分がいることで、十分満ち足りる。

それにしても、遊覧飛行では味わえない、この達成感。中年小市民も、まんざら捨てたもんじゃない。