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2011/08 Bear & Salmon

Black Bear

11年8月(3) ブラックベアとピンクサーモン

アラスカ湾の奥、フィヨルドに面した町バルディーズは、氷河をいただく山々に囲まれた小さな町だ。概して天気の悪い地域だが、霧が良く似合う。アラスカパイプラインの備蓄基地があり、このフィヨルドから大型タンカーで石油が運び出されていく。

バルディーズには、ソロモンガルチハッチェリーというサケ孵化場があり、ピンクサーモンが2億3千万匹、シルバーサーモンが2百万匹、毎年孵化、放流される。

やがて成長して戻ってくるピンクサーモンの数は1千万匹。ものすごい数である。沖合いで漁師に、岸からは釣り人に収穫され、一部は孵化場に入るが、大半は捕獲を免れて、産卵あるいは放精すべく川を求めて、岸辺を右往左往している。孵化場が取水している沢には堰が設けられてサケは遡上できないからだ。堰をくぐり抜けても、沢はすぐさま滝のようになっている。母川の水の匂いを嗅ぎながらも、海水では産卵できず、なんとも切ない不完全燃焼のまま、彼らは海岸で一生を終えてしまうのである。

サケの体の養分はすでに、卵、あるいは精子に移っており、身はまずい。ホッチャレだから、人間は見向きもしない。そこで登場するのがブラックベア。一日に何度か山の林から出てきて、海岸に行ってさっとサケの背中をくわえ、岩の上に置いて前足で腹を押さえる。サケのお尻からは卵がど~と噴出。そう、イクラである。クマのお目当てはこのイクラのみ。腹が満ちているクマは、魚の頭だけを食べるとか、皮だけをむいて食べると言われることがあるが、究極の贅沢はイクラだろう。次々とサケを捕まえては、イクラを押し出して食べている。どちらがメスのサケか、ちゃんと知っているらしい。

Black Bear

ここではクマも釣り人も、互いに無関心だ。クマはイクラにしか興味が無いし、釣り人は銀ぴかのシルバーサーモンにしか興味がない。観光客の一部が、こんなに近づいていいのかしら、という感じでクマの写真を撮っている。

クマが立ち去った後、僕もイクラを搾り出してみた。タッパーに採取して真水でさっと洗い、醤油に漬けて一晩。はたして、そのイクラは意外にもあっさりして絶品であった。

サケを捕らえて、イクラを食べるブラックベアを妻がビデオで撮影。

僕のイクラ搾りはこちら。