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2013/04 White-tailed Ptarmigan

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13年4月 オジロライチョウ

4月下旬。春分から一ヶ月が過ぎ、日照時間がぐんと伸びた。くわえて夏時間という宵っ張りシフトだから、9時ぐらいまで外にいることができる。風はぬるく、尾根にでも立たなければ手袋も要らないくらいだ。

それでいて、山々はまだ冬の顔。少し前に降った新雪が、岩肌に雪化粧を施したばかり。湖の上をクロカンで横切ることもできる。道路が閉まっているから、人々は入ってこない。雪山を独占しているような、贅沢なキャンプ。

一羽のオジロライチョウを発見したのは3日目。クロカンで谷の最深部まで行って、小休止していた時のこと。細い枝ばかりの、小さな潅木のあいだで採食中。何分も前から視界に入っていたはずなのに、気づかなかった。雪の上では見事な保護色。

保護色はもちろん外敵から身を隠す、あるいは欺くためだが、ライチョウは保護色に頼っているだけではない。動きがスローなのだ。「動き」というのは、ものすごく目立つ。晴れていれば影が動くから、なおさらだ。たとえ純白でも、雪原の上を普通に歩いていたら、イヌワシが見逃すことはないだろう。

そういうわけで、動きが遅いからピント合わせは楽ちんなのだが、問題は露出。晴れの雪面は手ごわい。撮った後にカメラのモニターを見ると、部分的に点滅している。白とびしてますぜ、というカメラからの警告。雪面に白い鳥だから、ノーマル露出というわけにもいかず、やや明るめ、めでたい明るめ、かなり明るめ、やばいくらい明るめと、4段階ぐらいに露出をふって撮影する。

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ところで、オジロライチョウは人間には概して警戒心が低い。もちろん個体差があるから、油断して近づきすぎると、スローながらもヨチヨチと逃げてしまう。今回は、僕が雪を踏みしめる音を嫌っていたので、標準レンズの出番はなかった。

以前カナディアンロッキーで、警戒心が欠如したライチョウを見たことがある。夏羽のライチョウは茶系で、モレーンのガレ場ではこれまた見事な保護色。実際、ごく近くで遭遇するまで気づかなかった。年に一度も人が訪れないような氷河の脇だったから、人馴れしていたのではなく、人間が危険なものかどうかわからなかったのかもしれない。

望遠で撮影しようとすると、いきなりどアップ。広角レンズに変えてしゃがみこんだ。カメラをのぞきながら顔を近づけても逃げない。好奇心にかられて、背中に触れてみると、指の第一関節あたりまで羽の中に入ってしまった。僕はまさかライチョウがいつまでも逃げないとは思っていなかったし、ライチョウはよもや触ってくる不届き者がいるとは思っていなかったのだろう。