FIELD NOTEFIELD NOTE

2016/12 Wildlife by Video

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2016年12月 写真からビデオへ

今年のマウンテンゴートの交尾期は、写真ではなくビデオ映像を撮った。風になびく冬毛。オスの求愛と悲哀。凍った湖上を踊る粉雪の渦。岩に叩きつける地吹雪。カメラのファインダーの中で動くものが、そのまま記録されるというのはやはり面白い。一瞬を切り取る写真に比べれば、ビデオ映像の方がはるかに日常的風景だというのに、長い間写真を撮るために生きてきた人間にとっては新しい感覚だ。

僕が今年ビデオを始めた理由は二つ。

動物をビデオでも撮ってみたいという思いは以前からあったのだが、優先順位を写真にしている以上、両方は無理だった。こと野生動物について言えば、本当にいいシーンは一度きりなのだから。今年の5月に、グレイシャー国立公園の生態系を総括的にまとめた新しい写真集を出版して、写真撮影に一区切りつけた。どれくらいの期間かはわからないとしても、いったんビデオ優先に切り替える心の余裕ができたのが主な理由。

別の理由は、4Kビデオカメラが庶民にも買えるようになったこと。4Kは画素数が多いから、ビデオから写真(静止画像)を抜き取ることができる。もちろん高画素の一眼ほどではないが、20㎝x 30㎝くらいに伸ばしてケチをつけるのは写真家ぐらいだろう。4Kならビデオ撮影中に「写真を撮りたい」という欲求をごまかすことができるのではないかと、踏んだのだ。

dec2016_02マウンテンゴート

そんなわけでここ半年ほど動物をビデオで狙っている。ソニーのα6300というカメラ。その気になればビデオの合間に高画質の写真を撮ることもできる。ミラーレスなので、アダプターを介して僕が持っているキヤノンのレンズを、オートフォーカスで使える。撮影倍率は35ミリ換算で1.8倍だから、300mmの望遠は、540mmということになる。手のひらサイズのカメラに70-300mmのコンパクト望遠ズームをつけると、超望遠の倍率になるという夢のような組み合わせ。が、うまい話には落とし穴がつきもので、倍率が高いぶん風を受けると小型三脚ではブレてしまう。機材が軽くなるはずだったのに、結局600mm用の大型三脚を常用することになったのは誤算だった。

dec2016_03ビッグホーンの交尾

ビデオを始めて気づいたのは、ビデオと写真がこんなにも似て非なるものだったのか、ということ。ビデオには、たとえ10秒でも時間の流れが込められている。撮るときに、一連の時間の流れを捉えようとしている。だから、撮った後から1カットの写真を抜き取っても予期したほどうれしくなかった。連写してベストショットを選ぶ、という写真撮影の行為とは根本的に違う。

それから困ったことに、ビデオ映像は状況を雄弁に語る余り、見る側に想像の余地を与えない。やばいくらいの説得力がありそうだ。もしも僕が今、冬のマウンテンゴートを5分のビデオにまとめたら、「はい、マウンテンゴートの魅力は十分にわかりました。ごくろうさま。さあ、次は何ですか?」と言われかねない。本当はそんなに薄っぺらいものであるはずがないのだが。46億年の地球史上最高傑作である生命体マウンテンゴートを、安易に紹介しては断じてならない。

じゃあどうやって撮っていくのかというと、まだまだ未確定要素が多い。はっきりしてきたのは、ビデオものめり込むのに十分奥が深そうだ、ということ。定年退職でもない大の大人が半年あまり、ビデオカメラを持って山を歩いて、これまでビデオ映像は1円も稼いでいない。つまり趣味として極めて純度が高い。それでいて、将来売れるかもしれないというギャンブル性も孕む。道楽人間としては、たまらないのである。(これ妻が読んだら、来年も続けられたらたまらない、って言うかなぁ、、、)

dec2016_04マウンテンゴートの子ども

今回をもって、Field Noteは休ませていただきます。ご愛読、ありがとうございました。