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2016/10 Western Larch

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2016年10月

毎年10月の第4週には天気が気になってしょうがない。アメリカカラマツが黄葉のピークを迎えるからだ。その黄色は、半逆光の光線で黄金色に変わる。森全体、山全体が輝くと荘厳な眺め。理想的には、バックは蒼穹。群青と言ってもいい。とにかく濁りのない青空が、カラマツの黄金色を際立たせるのは確かだ。

カラマツが写真家を惹きつけるのは色だけではない。その整った円錐の輪郭が美しく、さらに行儀よく並ぶと実に絵的だからだ。カラマツの密度が高いほど山の輝きが増すが、他の常緑広葉樹が混ざっていた方が、樹木の円錐形や、斜面に浮き出た幾何学模様を楽しむことができる。僕の場合、まずは引きで山全体を撮影した後に、望遠で絵を切り取るのが撮影の手順みたいになっている。

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今年の10月の降雨量は例年の7割増し。雨が多い。当然、雲が多い。必然、青空はごくわずか。僕は週間天気予報とにらめっこをして、ベストと思われる日にボウマンレイクに出かけた。湖畔がカラマツ林に囲まれ、その背後にレインボウピークという秀峰がそびえる。毎年、この時期に一度は来ているから相応の写真はすでにあるのだが、この風景を見て、撮りたいのだから何度でも来てしまう。

ぬかるんだダートロードのドライブの末、ようやく湖畔についた。昼過ぎまで雨は降ったり止んだり。湖面は、雲とも霧ともつかぬ乳白色の気体に覆われていた。やがてそれは流れ始め、カラマツ林が姿を現した。黄金色とは程遠い、鈍い黄色。だが、浮遊する霧になかなか似合う。消えゆく霧のはかなさと、散りゆくカラマツに悲哀を感じるせいだろうか。かなりしみじみ度の高い風景。ここに松尾芭蕉がいたら、名句をひねり出したに違いない。

期待していたカレンダーのような、さわやかな風景とは全く違うものであったが、しみじみの風景は悪くない。それどころか、胸にじんわりと響いてくる。問題は、そのしみじみをカメラに収め、再現できるかという点。さわやかな風景は色彩が派手でコントラストが高めだから、ストレートに再現しやすい。しみじみの風景はその逆で、一歩間違えるとじめじめ。単に陰気で暗めになってしまう。帰宅して、パソコンで撮った画像を見てがっかりすることの方が多い。僕には、見た風景を消化し、自分の表現方法に変換して残す、あるいは伝えるという術がない。現代の高性能デジカメをもってしても、しみじみの風景は手ごわい。芭蕉が羨ましい。

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