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2016/08 Golden Mantled Ground Squirrel

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2016年8月 キンイロジリス

高山帯のハイキングトレイル。峠や、見晴らしのいい場所に腰を下ろすと、決まってデブシマがやってくる。人間がかなり美味い食べ物を持っていることを知っているからだ。もちろん国立公園内では、たとえリスであっても動物に食べ物をあげるのは規則違反。だが、たいていの人間は食べ物をぼろぼろとこぼす。人間から見れば拾うのも面倒な小指の先ほどのかけらでも、デブシマにとってはうれしいおやつだ。こぼしたふりをして、わざとピーナッツを投げ与える輩もいるだろう。

ハイカーを熟知したデブシマは、人間の汗が持ち物のどこに染み込んでいるかを知っている。放置したカメラのストラップや、ザックの肩ベルトを舐めにやってくる。汗の塩分が魅力的らしい。舐めるだけならいいが、ガリガリと歯を立てることも。まったく油断ならない。

このリスの本名はキンイロジリス。英語では「金色のマントを着たジリス」というたいそう立派な名前で呼ばれている。でも僕はデブシマと呼ぶ。同じ生息地にチビシマリスという細身のシマリスがいて、キンイロジリスが対照的に太っているからだ。両者の身長はさほど変わらないが、デブシマの体重は2倍から7倍。チビシマとデブシマ、どちらも背中に縦縞がある。

aug2016_0203チビシマリス Least Chipmunk(左) キンイロジリス Golden Mantled G. Squirrel (右)

チビシマはもちろんすばしっこい。走る姿を撮れたためしがない。デブシマはどうかというと、まるまるとしている割には案外すばしっこい。植物の芽や花、種子、昆虫を食べているのだが、目まぐるしく移動する。撮影に協力的なのは人間の近くに来ておこぼれを探索する時だけ。高山帯のように身を隠す場所が限られた大地では、のろまでは生き残れない。 

短い夏も後半を過ぎると、彼らの採食活動は活発になる。さまざまな高山植物の種子が実る季節に、食べられるだけ食べて十分な体脂肪を付けないと、冬眠が永眠になってしまう。また冬眠から覚めた春のために、冬眠穴に食料を蓄えておく。冬眠中にも時々目を覚まして、少しずつ食べるという説もある。貯食のために餌を運ぶときは、頬袋に詰め込む。デブ顔だ。愛嬌があって可愛らしい。僕はカメラのファインダーに、目をぐいぐいと押し付ける。

頬袋がいっぱいになると、デブシマは一目散に岩の隙間の穴に駆け込む。僕は取り残されたような気分。尾根を駆け抜ける風は、もう秋の気配を含んでいる。

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