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2015/03 Golden Eagle

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2015年3月 イヌワシ

独断と偏見を承知で言わせてもらえば、イヌワシこそKing of the Skyー空の王者と呼ぶにふさわしい猛禽だと思う。近くであの眼光に射抜かれればもちろんのこと、はるか彼方の山陵上空を旋回しているときでさえ、キングの風格を認めることができる。

アメリカ合衆国では建国時からハクトウワシを国の紋章に取り込み、そのワシが国王を象徴しているような印象を与えている。ハクトウワシは北米大陸の固有種であり、また大きさや面構えも立派だから、それは妥当な選定だったと思う。青空を背景にした時、純白の頭部と黄色の巨大な口ばしは良く目立ち、ヨーロッパからの移民にとっては極めて印象的だったに違いない。

いっぽう僕がイヌワシにキングらしさを感じるのは、彼らが群れないからだ。孤高である。鳴き声を聞くこともめったに無い。それに比べるとハクトウワシは、複数で目にすることがよくある。モンタナでは道路わきで交通事故のシカに群らがるし、アラスカのサケの遡上地ではカモメのごとく乱舞し、カラスのごとく鳴き騒ぐ。晩秋のヘインズにいたっては、3,000羽以上のハクトウワシが集まるという。そんなにいては誰が本物のキングかわからないし、全員が王家の一族だと主張したら納税者はたまったものではない。

mar2015_02アラスカ州ヘインズのハクトウワシ

イヌワシは陸の猛禽で魚を好まず、夏ならば小型哺乳類や地上の鳥を捕らえる。冬、雪の深いロッキーでは獲物が減る。だからシカの死骸があれば、キングといえども見逃すわけにはいかない。となれば、僕としてもそれを見逃すわけにはいかない。

孤高のイヌワシは警戒心が強い。こちらの姿を見せてしまっては舞い降りてくれないから、撮影したい時はブラインドという自分の隠れ場所を設置する。状況によってはテントのようにすぐに設営できるものを使うが、上の写真を撮った時は、吹雪に耐えられる木製のブラインドを組み立てて置き、長期戦に備えた。

早朝、真っ暗いうちに1.2m四方のその木箱に入り、撮影を終了するまで出入り禁止。歩くのとちがって、座りっぱなしは実に寒い。ダウンジャケットを二重に着込み、下半身はスノーブーツごと毛布に包む。キングを撮影するのだから、いかなる身体的苦痛をも喜んで受け入れる覚悟があって当然。尿意を催すとやっかいだから、コーヒーの入ったポットは最後まで隠しておく。静止画の視界に時間が止まり、睡魔が襲う。

つま先が冷え切って感覚がなくなる頃に温度計をちらりと見ると、「極限状態を耐え忍ぶ」という行為に陶酔するほどには数字が出ていなくて、たいていがっかりする。正しいマゾは、その苦境を数字でも実感したいところだが。

mar2015_03雪の中を飛ぶイヌワシ